新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大の影響で、日本の日本語学校はどのような影響を受けるでしょうか

 みなさま、こんばんは。

 ご無沙汰していますが、みなさまはお変わりなくお過ごしですか。

 

 日本で留学生受け入れに関わっていらっしゃる方々や日本の日本語学校関係者の方々はよくご存知のように、現在(当エントリーが書かれている2020年4月現在)、日本を含む世界各国での新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大の影響で、2020年4月に日本へ留学予定だった多くの国や地域からの留学生の受け入れが滞っているようで、いつどのような形で受け入れることができるのかさえも先行き不透明な状態になっているようです。

 

 上記の留学生受け入れストップが一例ですが、今年(2020年)と翌年(2021年)、それ以降、日本の日本語学校業界は非常に厳しい状況に直面せざるをえなくなるのではないか、と考えています。

 世界的な新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大の影響で、日本の日本語学校はどのような影響を受けるのでしょうか。新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大に関しても不確定な情報も多く、様々な事態が流動的であることもあり、推測や予測に確実性を期すことが大変難しいのですが、限られた知見の範囲で、何点か私見を述べます。

新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大の影響が1、2年続けば、日本の日本語学校の数は半数以下に?!

 現時点で公開されている最新データによると、日本で外国人私費留学生を受け入れている日本語学校は、

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukanho_ho28-2.html

http://www.moj.go.jp/content/001318137.pdf

に挙げられているところのようですが、今後1、2年にわたり新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大の影響が続くことになれば、リストに挙げられている数百校の日本語学校の少なくとも半分以上は経営が立ち行かなくなるのではないか、と推測しています。

 日本語教育業界関係者の方々、日本語学校業界関係者の方々によく知られている日本語学校も含めて相当な数の(業界関係者にとっての)有名校や老舗校も経営危機に陥る可能性があるのではないか、とも予測しています。

 そもそも、2011年の東日本大震災以降、日本の日本語学校は、それ以前よりも安易な形での私費留学生受け入れを進めるところが多くなったようです。10年近くの年月、日本各地のそれまで留学生受け入れと無縁と思われていた多くの地方都市に日本語学校がまさしく雨後の筍のように設立され、日本語学校の数も10年前と比べて2、3倍に増加してきたようです。日本語学校バブルだったと形容できるような状況だったと言えるのかもしれません。

 実は、2010年以前にも、学校としての機能を果たしていないように見受けられる日本語学校が相当数存在していたようです。日本語教育や留学生の将来にほとんど関心を持たない日本語学校とは名ばかりではないかと言わざるをえないひどいところも存在していて、大きな事件を起こしたこともあったようです。設立当初は有志の日本語教師の方々が立ち上げられたであろう(日本語学校業界では)老舗校と言われる日本語学校も30年前後の時が経過して、現在は学校事業の継続や学校経営での収益向上が主目的となってしまっているようなところもあるようです。

 そのようなことを考慮に入れますに、日本の日本語学校業界は、日本語学校バブル以前の規模かそれ以下の規模に縮小することになる可能性は高いだろうと思っています。

〇いわゆるブラック日本語学校はけっこうしぶとい

 現在日本語学校に勤務されている日本語教師の方々や留学(生)業界に関わっている方々で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いわゆるブラック日本語学校は壊滅し、比較的良心的な日本語学校は(何とか)サバイバルできるだろう、というようなことを(おそらく希望的観測で)表明されている方々がいらっしゃるようなのですが、はたしてそうなるでしょうか。
 いわゆるブラック日本語学校は、少なからぬ年数、意図的に日本語教育の質を落とすことで相応の利潤を得て資金として蓄えているところが少なくないようであり、なりふり構わずサバイバルゲームに勝ち残ろうとすることもあり、そう簡単にはつぶれないのではないかと予測しています(ブラック日本語学校が比較的サバイバルに強く、その多くが新型コロナウイルス感染拡大収束後も生き残ってしまうであろうことは、個人的には残念に思うのですが)。

 〇日本語学校バブル崩壊で多数の日本語教師日本語学校職員の職が消滅?!

 20年前、30年近く前から、日本の多くの日本語学校は、自校の教職員を他業界より相対的に安い給料、待遇で雇用してきたようで、かつては少なからずいたらしき優秀で熱心な教職員を雇い止めしてきた、辞めるように仕向けていたこと等あり、自校や業界を良い方向に状況を変えていくことができる人材はそれほど多く残っていないのではないかと思われます。

 大変残念なことですが、今回の日本語学校バブル崩壊が起きることで、2011年の東日本大震災以降に日本の日本語学校日本語教育や留学生受け入れ業務に新たに関わるようになった日本語教師の方々、学校職員の方々で、勤務されていた日本語学校からいわゆる雇い止めされ日本語教師としてのお仕事がなくなってしまう方々や勤務していた学校を辞めさせられる方々が大勢出てくるのではないかと思います。

  そうならないといいとは思っていますが、日本語学校バブル崩壊で多数の日本語教師、学校職員の職が消滅することになるのではないかということをとても心配しています。

 以前、看護師をしている友人から職場環境や待遇向上のために看護師が行ってきた待遇改善運動のことをお聞きしたことがあるのですが、日本語教師や学校職員としての給料や待遇の向上、地位保全には、看護師の方々が行ってきた待遇改善運動と同様に、当事者である日本語学校に勤務されている日本語教師の方々や学校職員の方々が日本語教師ユニオンなどを通じて粘り強く運動を続けるぐらいしか打開策がないかもしれません。

〇日本の日本語学校の在り方の変化が起こる――オンライン授業と存在意義の変容

 知人の日本語学校関係者の方々からは、現在(当エントリーが書かれている2020年4月現在)、日本語学校業界関係者の間で日本語学校の身売り情報が駆け巡っているようだ、とお聞きしています。様々な欠陥を抱えつつも、30年以上続いてきた日本の日本語学校ビジネスモデルが大きな曲がり角を迎えた、と言ってもけっしておかしくない状況のようです。もしかしたら、日本の外国人私費留学生を受け入れる日本語学校の既存のビジネスモデルは事実上終わりを告げた、と言っても過言ではない状況なのかもしれません。

  そのような大変な状況にある今も、日本語学校に勤務されている日本語教師の方々(やフリーランス日本語教師の方々)でオンラインの授業に取り組もうと尽力されている方々が少なからぬ人数いらっしゃるようで、ツイッターフェイスブックなどのSNSなどで熱心に情報交換や意見交換をされているのを感心させられながら拝見しています。

 (一部の先進的な取り組みを行っている日本語学校を例外として、)日本の日本語学校がオンライン授業や日本語教材のデジタル化などに不熱心だったというのは、日本語学校のことを多少なりとも知っている業界内外の方々には詳しく説明するまでもない事実だと思います。今まで日本の日本語学校がオンライン授業に不熱心だったのは、多々のハードウェア的問題、ソフトウェア的問題に加え、日本語学習者がオンラインで授業を受けて日本語能力を向上させることが可能になってしまうと、日本語学習者が留学生として日本へ留学することをかならずしも必要としないということを示唆してしまい、それが自身のビジネスモデルの否定につながる面がある、ということが大きな理由の1つにあるのではないかと思われます。

 しかし、現在(当エントリーが書かれている2020年4月現在)、日本の日本語学校でオンラインで授業を行うところが実際に増えてきているようです。その背景には、オンライン授業を行うことによって、母国にいる留学予定者や一時帰国して日本に戻れない留学生、日本にいるものの通学がままならない留学生、日本留学エージェント、留学生の家族、諸関係者、からの学費、諸経費返還要請への有効な対応策の1つになり得る、という消極的な要因もあるのではないかとみています。
 すべての日本語学校、すべての留学生が対応できるわけではないとは思いますが、日本語学校によっては、留学生によっては、日本の日本語学校の留学生向け授業でも、オンライン授業を行うことで留学生が日本にいなくても授業を受けられるような環境を構築することが可能になり、そのことにより新しい日本語学習法が確立していき、新しい日本語教育のビジネスモデルも発展していくことになるかもしれません

 日本語学校の既存のビジネスモデルが事実上終わりを告げたという点に関して、もう少し補足しておきます。今後、日本の日本語学校で私費留学生への日本語教育と進学指導の主軸とする従来型モデルの日本語学校は大幅に減少していくのではないでしょうか。すでに明確な目的意識を持ってそのような形での学校経営、運営に取り組まれているところもあるようですが、日本の日本語学校は、日本語教育も含めた留学生への全人的教育、トータルケアを行うことを存在意義とするようになっていくのではないか、と予測しています。

 

 日本語教育に関わっていらっしゃる方々、日本語学校業界関係者の方々、留学(生)業界に関わっている方々にとって、多少なりともご参考になったようであれば、幸いです。

 長文、大変失礼しました。

 お読みいただき、ありがとうございました。

 最後になりますが、現在(当エントリーが書かれている2020年4月現在)、新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大が懸念されていて、不安を抱えていらっしゃる方々も多かろうことかと存じます。外出自粛などの要請が短期間で終わり感染拡大も収束に向かえばよいと思うのですが、おそらく世界各地で不安定な日々が相当長期間続くことになるのではないかと思います。感染拡大に気をつけつつ、ささやかでも楽しみを持って生活を続けましょう。みなさまのご健康とお幸せをお祈り申し上げます。