東京都区内の老舗日本語学校が非常勤講師に違法残業を強要、労働基準監督署が是正勧告

 みなさま、こんばんは。昨年前半より長らくご無沙汰してしまい、大変失礼しました。

 みなさまはお変わりなくお過ごしですか。

 

 日本の2020年のお正月はもちろんのこと、ベトナムの2020年のお正月の元日も過ぎてベトナムのお正月の4日目に入ってしまい、何とも時期外れのごあいさつではありますが、あらためまして明けましておめでとうございます。

 "Chúc mừng năm mới!"(←ベトナム語の「新年おめでとうございます」)

 今年もよろしくお願い申し上げます。

〇東京都区内の老舗日本語学校が非常勤講師に違法残業を強要

 ツイッターフェイスブック等で多くの日本語学校関係者の方々が話題にされているのをお見かけしていて、日本語教育にご関心、ご興味をお持ちの方々、特に日本語教師の方々はご存知の方々も多いのではないかと存じますが、東京都新宿区にあり(日本語学校業界内では)老舗の日本語学校として知られている千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校を経営する会社が同校に勤務する非常勤の日本語教師に違法残業を強要していたようであることが判明し、新宿労働基準監督署が是正勧告を出したようです。昨日、1月27日には記者会見も行われたようです。

 下記の記事で取り上げられているようです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200127-00010702-bengocom-soci
「時給は300円くらい」 日本語学校に是正勧告 教員はコンビニバイトとかけもち
https://www.bengo4.com/c_5/n_10702/

「時給は300円くらい」 日本語学校に是正勧告…教員はコンビニバイトとかけもち

 記事には、

1コマ(45分)あたりの給料は教員によって異なるが、勤務4年目の塚越さんで1コマ2010円。授業時間以外にも、採点や学生の面接、授業準備にも時間は割かれる。授業準備に6時間以上かかる場合もあり、給料に反映されない労働時間を含めると「時給300円くらい」だと言う。

というケースや

7時間半に及ぶ遠足の引率は手当として3000円だけが支払われ、本給は支払われなかった。「学校側は『楽しいからいいじゃないか』と仕事と見なしませんでした」

というケースが紹介されているようです。

日本語教師ユニオン

 上記の記事にもありますが、千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校を経営する会社が新宿労基に是正勧告を出された件、昨年(2019年)後半に日本語学校に勤務されている有志の方々によって立ち上げられた日本語教師ユニオンが関わっているようです。
 昨年後半、日本の日本語学校に勤務されている方々が日本語教師ユニオンの設立を進められていて、実際に設立までこぎつけられたようであるようであること、関係者の方々が昨年の日本語教育能力検定試験の会場近くでちらしを配布されていたようであることなどはSNS等を通じて知っていたのですが、実際に千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校に対して粘り強く交渉をされていたことは上記の記事を読むまでほとんど知らず、千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校日本語教師ユニオンの名前が出ている記事とその内容に驚いてしまいました。

〇長年に渡る日本語学校教職員の十分とは思われない給料・待遇問題

 日本の日本語学校業界は、長年に渡り、相当多くの日本語学校が教職員が余裕を持って生活できる給料や待遇を支払うのが困難で、日本語学校の専業教職員であっても生活が成り立つかどうかぎりぎりの給料と待遇で長時間サービス残業している方々が少なからずいらっしゃるという業界事情を抱えてきたようであり、また、長年の間、少なからぬ日本語学校で非常勤日本語教師が(ときには自主的に、ときには強制されて)違法残業や違法持ち帰り残業を行う体制が温存されてきた、ということがあるようです。

 (もう少し詳しいことをお知りになりたい方々は、下記の

https://togetter.com/li/1299571

日本の日本語学校でのサービス残業(違法残業)や無給の持ち帰り採点業務など授業時間外の無給業務に対する向き合い方に関して

もご参照いただければ幸いです。)

日本語教師ユニオン設立と今回の件に関して思うこと

 日本の日本語学校でお仕事されている(されていた)日本語教師の方で

http://nihongo-bdama.net/2019/08/09/nihongokyoshi-hatarakikata/

日本語教師(非常勤)としての働き方
というエントリーを書かれている方がいらっしゃるようです。エントリーに『私は、日本語学校の非常勤日本語教師はコマ給(45〜50分)3,000円以上が妥当ではないか、と思っています』とあるのですが、日本語学校に雇用され働く側のご意見としてはごもっともなのではないかと思い、後日別件でお会いした複数の日本語学校の経営者の方々や管理職の方々にお聞きしてみたところ、いずれの方々も苦々しい表情を浮かべられるのを目撃してしまい、容易ならざる問題だと感じさせられた、ということがあります。

 非常勤日本語教師の賃金向上や違法残業問題に本気で取り組むのなら、日本語教師有志の方々が日本語教師ユニオンか労働組合の活動も行える団体を結成して日本語学校側と交渉することを検討しないかぎり、実現はなかなか困難なのではないか、とも思っていました。

 そのように思っていたこともあり、上記のニュースは広い意味で日本語学校業界、日本語教育業界を活性化することにつながる良いニュースではないかと考えています。

 (もっとも、学校経営者の方々や管理者の方々が非常勤講師の方々に違法残業を強要していたようであることが判明し労働基準監督署が是正勧告を出したというニュースは、日本語学校経営者側の立場の方々にとっては、実におもしろくない内容かもしれないと思わないでもないのですが。そのような方々にほんのお気持ちだけご同情申し上げるとともに、今まで未払いだった教職員の給料や手当などは上記の事件の第2弾、第3弾とならないよう覚悟を決められて快くお支払されたほうがよろしいのではないでしょうか、と申し上げておきます。)

 今回の件が当該校のみならず多くの日本語学校で非常勤の日本語教師の方々へ正当な賃金の支払いが行われるようになるきっかけとなり、そのことと合わせて常勤の日本語教師の方々の給料と待遇向上、ひいては日本の日本語学校業界全体の労働環境改善と日本語教育のレベルアップに結び付けば理想だと思っています。

 みなさまはいかがお考えですか。

〇関連情報

 日本語学校ユニオンのウェブサイトは下記のURLのようです。

https://daigaku-union.jimdosite.com/

日本語教師ユニオン

 ツイッターのアカウントもお持ちのようです。

https://twitter.com/jts_union

日本語教師ユニオンツイッターアカウント

 

 長文、大変失礼しました。

 お読みいただき、ありがとうございました。